虹の国のひと

「嬢ちゃん 嬢ちゃん。ほら虹だよ。今日はいいことがあるよ」

列車の窓に寄りかかっていた私の目に、きれいな虹が飛び込んできた。

もう15年以上前のことである。

私は京都市の烏丸という所の近くに住んでいた。

インテリアデザインの学校を卒業し、大阪の歴史あるゼネコンに勤めだしたものの、思わぬ難題に悩まされていた。

新しく住宅部門を立ち上げ、戸建住宅の経験者を採用するタイミングにご縁を頂いたのだが、責任者の一般のお客様に対する意識がとてもズレていたのだ。

中途採用者たちや心ある在籍していた社員たちは、「お客様」ではなく「責任者」に悩まされることになってしまった。

そんな毎日の朝の通勤列車内で『虹の国のひと』に出会った。

向かいに座っていたそのご婦人はビルの清掃業務をされているらしく、その朝は緊急でいつもと違うビルでの仕事になったそうだ。

私があまりに辛そうに見えたらしく、虹が見えたので声をかけてくれたそうだ。

他愛ない世間話を交わし、しばしの談笑が続いた。

ご婦人の下車する駅が近づくと、ほほ笑みながら「うつむかんようにな」と励ましの言葉を残してくれた。

正直この朝の出来事は、日々の仕事で記憶の中に埋もれてしまった。

しかし、今思えばこのご婦人の姿は、神々しくすら感じるのである。

これから私がこの朝と同じ条件で列車に座り、向かいに辛そうな女性が座っていたら、同じように声をかけられるだろうか。

容易に想像ができなくて恥ずかしくなる。

まだ「上を向こう、いいことあるぞ」と意識するのに精一杯だが、『虹の国のひと』から「難しく考えすぎよぉ」と笑われそうである。







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